パターン・ランゲージの考え方
このA Pattern Language for a good old futureは、「パターン・ランゲージ」という考え方に基づいてつくられています。パターン・ランゲージは、建築家のクリストファー・アレグザンダーが提唱した知識記述の方法です。アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し現れる法則性を「パターン」と呼び、それを「言語」(ランゲージ)として記述・共有する方法を考案しました。ひとことでいえば、デザインにおける<創造の型>です。
パターン・ランゲージでは、デザインにおける多様な<創造の型>をパターンという単位にまとめます。パターンでは、<状況><よく起こる問題>と、その<解決><結果>の発想が一対となって記述され、そこに<名前>(パターン名)が付けられます。パターン・ランゲージを使う人は、自らの状況に応じてパターンを選び、そこに記述されている抽象的な解決方法を、自分なりに具体化して実践することが求められます。
PATTERN LANGUAGE = DESIGN ×( WHAT + WHY + HOW )
つまり、とあるデザイン領域において、これまで繰り返されてつくられてきたよいものを観察し、「なにを」「なぜ」「どのように」つくるかの秘訣を言語化したものと言えます。「なにを」「なぜ」とは、つくる人が何を「美しい」「よい」と考えるかの一つのヒントであり、「どのように」では、実際にどうすればよいかのヒントをデザイン=問題発見解決の形式で記述されています。 そんなアイデアのヒントが書かれた小さな単位(PATTERN)でたくさん生みだされ、自分だけにとどまらずに周りの人たちと共有していけば、多くの人を巻き込んでよいものを「つくる」ことが可能になるのです。
ここで、パターン・ランゲージには以下の3つの役割を見出すことができます。
<1>COGNITION(認識)
一つのパターンを知っていることで、「認識のメガネ」として、世の中のあらゆるものを観察・見分けることができます。
<2>IDEA(構想)
一つひとつのパターンがデザインのアイデアであり、組み合わせたり重ね合わせたりして、より複雑なアイデアやビジョンを描くことができます。
<3>VOCABRARY(共通言語)
誰かと一緒につくるときには、共通言語という役割を持ち、複数人で議論や合意形成を促します。
このような3つの役割があることで、いわゆるデザインの専門家でない誰でもない普通の人たちでも、自分たちのよいと信じるものを実際につくること支援しています。 井庭崇研究室では、このパターン・ランゲージの役割に着目し、『Learning Patterns(ラーニング・パターン)』『Presentation Patterns(プレゼンテーション・パターン)』『Collaboration Patterns(コラボレーション・パターン)』を制作してきました。現在ではこのパターン・ランゲージの手法を、幅広い分野で応用した18プロジェクトが活動しています。